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- 夏の身近な薬草の紹介 ⑥
今年は入梅宣言と同時に梅雨明けほどのいいお天気続きで、農家等は困っておられました。やっといい雨がもらえたと思えば、これまた集中豪雨で各地方では大きな災害となって、お気の毒に被災された方々がたくさんいらっしゃいます。心よりお見舞い申し上げます。
地球温暖化のせいか異常気象ですね。
また、太平洋側の考えられない場所に考えられない生き物で「ヒョウモンダコ」(熱帯・亜熱帯地方に生息し、威嚇すると青い豹がら模様、体調は10cmぐらい)というタコが見つかったりで………。噛まれると命に係わるそうですよ。恐いですね。海に行かれる方は注意してくださいね。何れにしろ変ですね。
それでは、今回は「夏の身近な薬草の紹介」をしましょう。
◇アサガオ ◇(ヒルガオ科)
◎自生、特徴
熱帯アジア原産で奈良時代に薬用として輸入されたといわれています。逆毛のついた茎は蔓となり、左巻きに物に絡まって伸びます。葉や葉柄にも毛があり、葉は通常3裂しています。
◎薬用部位と薬効
種子を生薬では牽牛子(けんごし)といいます。下剤(強力に効くので峻下薬(しゅんけやく)とされる)、下半身の浮腫には特に有効といわれています。
◎名前の由来
牽牛(けんご)は宋の時代に薬用として栽培されたアサガオの種子を入れた箱を、牛が引いていたのでこの名前になったとされています。牽牛花(けんぎゅうか)といわれていましたが、もともとキキョウやムクゲ、ヒルガオなどがアサガオと呼ばれた時代もあったようで、早朝に開花する美しい花として定着しました。
◇ウツボグサ ◇(シソ科)
◎自生、特徴
日当りのよい草地、堤防などに見られます。シソ科の特徴である四角形の茎を有し、高さ20~30cmになります。6~7月頃に茎の先端に3~8cmの青紫の花穂をつけ、夏には枯れてしまいます。ヨーロッパにはやや花の小さいセイヨウウツボグサ(Self-Heal)が生育します。
◎薬用部位と薬効
夏に枯れた花穂部が生薬の夏枯草(かごそう)です。花穂部のみを集め陰乾させます。1回7~8gを煎じ服用します。膀胱炎などの体のむくみに用います。
◎名前の由来、その他
花穂の形が武士が矢を入れるのに用いた靫(うつぼ)に類似するのでこの名前がつきました。若い地上部は湯がいて食用にできます。
◇オトギリソウ ◇(オトギリソウ科)
◎自生、特徴
高さ30~50cmで、7~8月に茎頂に1.5~2cmの黄色の5弁花が集まって咲きます。次から次と開花しますが、一つの花は1日で枯れてしまいます。葉は長さ2~5cmの対生で葉柄はなく、卵状の長楕円形です。
◎薬用部位と薬効
全草を使用します。搾汁を止血や鎮痛、打撲傷などに使用します。
◎名前の由来、その他
“和漢三才図絵”(わかんさんさいずえ)には、鷹の傷薬の秘伝としていた鷹匠兄弟の弟が他人に教えたことに兄が立腹し、弟を斬殺したことによると書いてあります。有毒な牧草の一つで、この植物に含有されている成分が皮膚炎を起こさせ、脱毛させることも知られています。西洋ではこの仲間を“聖ヨハネの草、St.John’s Wort”といわれています。
◇カキ ◇(カキノキ科)
◎自生、特徴
果実を食用とするために、どこにでも栽培あるいは野生品を見ることができます。葉は楕円形で鋸葉はなく、長さ8~15cmくらい、幅4~10cmで比較的厚みがあります。栽培品種の多くは野生のものでヤマガキといい、葉は小さめで毛が多くついています。6月頃発芽した先端部やその少し下の枝に花芽がつき、淡黄色の花が咲きます。雄花のつかない木もあるので花粉を人工受粉する必要のある場合もあります。
◎薬用部位と薬効
柿渋を毎日盃に一杯くらい飲むと高血圧症に有効とされます。また切り傷の止血や湿疹にも有効です。虫のついていない葉を夏に集め乾燥させ、適当に刻み茶剤として1回5~6gを番茶のようにして飲むとビタミンCなどを多く摂ることができます。漢方薬ではしゃっくりを止める処方に柿蒂湯(していとう)というのがあります。柿のへたを5gほど煎じて服用すると、しゃっくりの止まりにくい時に効きます。
◎名前の由来、その他
英語名もカキですがその名前の由来はよくわかりません。カキの仲間は唐木(からぼく)として有名な黒檀の原植物で、東南アジアに広く生育します。
「夏の身近な薬草」は、まだもう少しご紹介するのがありますので、次回⑦をお楽しみにね!!
- 初夏の身近な薬草の紹介 ⑤
桜の花も咲き終わってしまい、「今年の桜はすっごく綺麗だったね」と言いたいところですが、私たちの方(甲賀町)では寒暖の差が激しくて今咲こうと思っていた桜も寒さで花が開かず、枝に蕾のまま残ってしまいシーズンが終わってしまいました。
こんなの〇十年私の記憶では初めてです。今では満開を見ずに葉桜になってしまいすごく寂しいです。でも、入れ替わりに八重のぼたん桜が咲いてとても綺麗でした。これからの季節、野山の木々は新芽を出し、初夏の景色に変わろうとしています。
シリーズで③、④と春の身近な薬草を少し紹介しましたが、⑤では、初夏の身近な薬草を紹介しましょう。
◇ウツギ ◇(ユキノシタ科)
◎自生、特徴
山野に広く見られ、よく枝分かれし、2~3cmの高さとなります。
花期は5~6月で5枚の花弁からなり、鐘状をしています。葉は対生し、葉身には裏表ともに毛があります。秋にできるさく果は直径4~5㎜の球状で冬まで残り、中に細かい種子が入っています。
◎薬用部位と薬効
9~10月頃の果実や、発芽期の葉を用います。利尿薬として果実は3~9gを、葉は10~15gを煎じて用います。
◎名前の由来とその他
卯の花は卯月(旧暦4月)に開花するとか、茎の髄が発達し、芯が空になるので“空木”(うつぎ)と名付けられたと言われています。
◇クリ ◇(ブナ科)
◎自生、特徴
山野に自生したり、栽培されます。自生品はシバグリ(柴栗)。落葉樹。高さ15~20mにもなる高木で、雌雄異株。6~7月頃花柄の上部に雄花、その下に雌花が特有の強い香りを出して開花します。
◎薬用部位と薬効
葉、樹皮、いがを用い、湿疹やかぶれに葉5~10g、また樹皮やいがは5g程度を煎じて外用とします。
◎名前の由来、その他
いがの実が黒いために黒い実からクリに転訛したとされ、クリは古代から重要な食糧の一つで、中国の天津甘栗やフランスのマロングラッセなどが有名です。
◇シラン ◇(ラン科)
◎自生、特徴
5~6月頃に紅紫色の特徴ある花が咲き、美しいです。少し湿った場所を好みますが、自生や栽培を方々で見ることができ、冬には地上部が枯れてしまいます。4月ごろ発芽して葉は3~5枚出てきます。その長さは20~30cmで互生します。
◎薬用部位と薬効
地下に擬球茎があり、生薬の白及(びゃっきゅう)はこれをよく洗浄して、湯通し後乾燥したものです。 多量に粘液を含むので生の擬球茎は糊として使用することもできます。薬用には止血や消炎に用いられます。
◎名前の由来、その他
紫色の蘭であることに由来します。白及(びゃっきゅう)は白い擬球茎が連なって地下にあることによります。花も中国では蘭花として知られています。
◇スイカズラ ◇(スイカズラ科)
◎自生、特徴
山野の日当りの良い場所に生育し、冬でも落葉せず見ることができます。蔓性(つるせい)で右に巻き、葉は長さ3~7cmの対生楕円形。花は5~6月頃に2個ずつ咲き、白色から後に黄色に変化していきます。
◎薬用部位と薬効
花を乾燥したものが生薬の金銀花(きんぎんか)です。茎および葉は忍冬(にんとう)と呼ばれ、いずれも薬用とされます。金銀花は解熱やでき物の治療を目的とした漢方薬の原料です。忍冬は茶剤として利尿効果を期待して用いられることもあります。
◎名前の由来、その他
金銀花は花の色が白から黄に変化することから、また忍冬は冬でも葉が枯れないことからきています。花をそのまま食したり、薬用酒として用いることもあります。
スイカズラとは花の中の蜜を吸う吸葛(すいかずら)であったり、でき物の腫れを吸い取ることができることなどからと言われています。英名も花の蜜と関係のある名前がついています。
◇セッコク ◇(ラン科)
◎自生、特徴
老樹や岩に着生しています。草丈は5~20cmで、光沢のある3~5cmの葉を数枚互生し、5~6月に白から淡紅色の花を咲かせます。芳香もあります。
◎薬用部位と薬効
全草を健胃剤や精力増強剤とします。
◎名前の由来、その他
石斛(せっこく)の中国名を音読みしたものです。デンドロビウム(Dendrobium)属は、主として熱帯~亜熱帯に約1000種も分布し、園芸用としてよく知られています。
初夏に咲く身近な薬草を紹介しました。
- 身近な薬草の紹介 ④
昔から、2月は逃げ月と言われるようにアッというまに過ぎ去り、3月10日になりました。
月日の経つのは速いもので明日(11日)で、あの東日本大震災がおきてから丸二年になろうとしています。震災で多くの命が奪われ、未だ行方の分からないままの方々がおられ、何んとも言えない気持ちでいっぱいになります。心よりお見舞い申し上げます。
でも、季節は一歩一歩前に進み、もう目の前に春がやってきました。
③で紹介しましたが、続いて春に咲く身近な薬草をもう少し紹介しましょう。
◇スミレ ◇(スミレ科)
◎自生、特徴
花期の高さは地上7~15cmほどで、3~5月に濃紫色(まれに白色)の花が咲き、秋ごろまで次々と開花します。日当りのよい山野によく見られます。5枚の花弁の中で下弁1枚が後方へ袋状に膨らみます。果実は楕円形で、熟すと種子を3裂した中からはじき飛ばします。
◎薬用部位と薬効
花部が鎮痛作用を有します。
◎名前の由来、その他
花の形が大工の使用する墨壺に似ているためといわれています。若葉を湯がいて食用とし、万葉集にも山菜として歌われているくらいです。Violetといわれる植物は世界中に500種もあり、広く分布しています。
◇アンズ ◇(バラ科)
◎自生、特徴
中国原産で、日本へは古くに渡来したとされています。野生もあるといわれていますが、ほとんど植栽されています。梅よりも遅れて3~4月初旬に開花します。梅と同じ5弁の淡紅から紅色の花を開かせます。実のならない観賞用のものも栽培されています。長野県更埴市(こうしょくし)は有名なアンズの栽培地として知られております。
◎薬用部位と薬効
アンズの果実の果肉は食用となり、種子の中の仁が杏仁(きょうにん)という生薬です。漢方の原料の一つで“麻杏甘石湯”(まきょうかんせきとう)など鎮咳作用を期待して用いられます。杏仁の中には青酸配糖体が含有され、多量の服用で呼吸中枢を麻痺させるので専門家の指導のもとに使用してください。
◎名前の由来
中国の杏子の読み方から転訛したとされています。古くはカラモモと言われておりました。
◇タンポポ ◇(カンサイタンポポ、キク科)
◎自生、特徴
日本各地には20種ほど自生しています。甲賀町内にもカンサイタンポポといわれるものや、花の白いシロバナタンポポ、さらに明治初期に渡来したセイヨウタンポポ(Dandelion)などどこでも見られます。西洋種と在来種との区別は主に総苞片(そうほうへん)と呼ばれている頭花を支える緑の部分を見ますが、西洋種はこの部分がまくれています。葉はロゼット状でその中心から茎が伸び、2~5月に花を咲かせます。
◎薬用部位と薬効
通常開花前の葉の根部を水洗いし乾燥したものを用いますが、通年採集して用いられます。漢方薬では“蒲公英湯”(ほこうえいとう)といいます。解熱、解毒、抗炎症作用や吹き出物にも有効といわれております。催乳効果なども期待できます。全草の乾燥生薬であれば、1日2~4gを煎じて数回に分け服用します。蒲公英湯中には8gの乾燥根が処方されています。
◎名前の由来、その他
葉も含めた全体を上から見ると、鼓草(つづみぐさ)の別名があるくらい鼓の形によく似ています。この鼓を打つ音から“タンポンポン”となったとか、綿毛のタンポンに似ていることや、茎から花にかけての形が稽古用のたんぽ槍に似ていることなどによるといわれています。若葉を茹で水で晒し、よくアクを抜き、お浸しや天ぷら、和え物として食用にできます。また、乾燥葉は刻み、フライパンで少々焦がし、コーヒーミルで粉末にすればカフェインのないコーヒーの代用としても用いられます。
春に咲く身近な薬草を紹介しました。
- 平成25年2月より企画展示室のテーマが替わりました②
当館企画展示室では、本年2月1日よりテーマが替わりました。第一弾では由緒ある『油日神社』と『大鳥神社』を紹介させていただきました。第2弾としまして『櫟野寺』と『阿弥陀寺』そして近江の代表的な製薬会社としてメンタームの『近江兄弟社』を紹介いたします。
先ず、甲賀市甲賀町櫟野にあります『櫟野寺』(らくやじ・いちいのでら)の紹介です。櫟野寺は「いちいの観音さん」と呼び親しまれ信仰を集めております。この観音さまは今から1200年前、比叡山開祖の伝教大師(最澄)さまによりこの地の櫟(イチイ)の霊木をもって一刀三礼のもとに謹刻安置されたのが「十一面観世音菩薩」(いちいの観音)と伝えられ、日本最大坐佛観音さま(甲賀の大仏)で国指定重要文化財となっております。
本像は、像高312cmの一木造で、櫟野寺の本尊として大悲閣(収蔵庫)内に安置されている秘仏です。左手に華瓶、右手は膝上に念珠をもち、頭上には十一面化仏をのせ、吉祥座を組んでおられ、像形などから平安初期の造像と考えられています。
このお寺の境内には、伝教大師お手植えの槙の木(樹齢1,200年)があります。
また、坂上田村麻呂公は当寺を祈願寺と定め、家来に命じて国技である相撲の土俵を設けられ、
秋(大会式10月18日)には今でも奉納相撲が開催されております。
観音様を彫刻されたイチイの木は医学的にも注目され、特に針葉樹セイヨウイチイの樹脂が抗がん剤となり医療的にも文献が揃えられているそうです。
イチイの木がどんな木かご存じない方は、展示してありますので一度見にきてください。
次に紹介いたしますのは、甲賀市甲賀町櫟野にある『阿弥陀寺』の紹介です。
戦国時代には、櫟野寺(天台宗)は七つの末寺があり、その一つに『阿弥陀寺』がありました。戦国時代の1569年に焼失してしまい、1609年に再興されて天台宗から浄土宗寺院となりました。現本堂は、1959年(昭34年)に改修されました。
本堂の中央に本尊『阿弥陀如来坐像』(国の重要文化財)がまつられています。像高は109cmの一木造りです。平安時代初期の作で塗箔は剥落して全体は黒色になっています。
阿弥陀如来坐像の左の脇壇には、一木造りの金色像である『聖観音立像』(国の重要文化財)が安置され、左端には一木造りの『薬師如来立像』(県の文化財)があります。
右の脇壇には、銅造りの『釈迦誕生佛』があります。像高10.6cmの小像で7世紀の作と言われ、県内における数少ない誕生佛のうちの最古の像だそうです。
次に紹介いたしますのは、滋賀県近江八幡市にあります近江の代表的な製薬会社としてメンタームの『近江兄弟社』です。
『近江兄弟社』の創業者はウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏でアメリカ生まれです。大学時代に外国伝道を志し、1905年に来日。滋賀県近江八幡に、英語教師として赴任します。
ヴォーリズ氏は、商売で儲けた資金を社会奉仕に投入することを理念に、信仰と事業を両立させた社会奉仕グループを構築していきます。私有財産を持たずに社会の貢献に費やした偉業は今日でもずっと、有形無形の文化遺産等「想い」として、私たちの生活に息づき愛され続けています。
『近江兄弟社』の社名は、ヴォーリズの愛した「近江」の地名と、クリスチャン精神に基づき目的に向かって心を一つにする仲間という意味を持った「兄弟」を合わせて命名されたものです。
ヴォーリズ氏とA.Aハイド氏との交流と親交により外皮用薬のメンソレータムが誕生しました。1920年ヴォーリズ氏が起業した近江セールズ㈱(現近江兄弟社)でメンソレータムの輸入がはじまり、1931年からは日本でのメンソレータムの製造も開始しました。そのメンソレータムは現在、「近江兄弟社メンターム」のブランド名で、暮らしの中で愛され続けております。
だいぶ春らしく暖かくなってきましたので、是非「くすり学習館」へお出かけください。
兵糧丸づくりの体験も実施いたしております(@30円で10人以上のグループでお越しください)
スタッフ一同お待ちいたしております。
- 平成25年2月より企画展示室のテーマが替わりました①
当館企画展示室では平成25年1月31日まで『滋賀の家伝薬』と題して伝統ある家伝薬を紹介展示しておりましたが、2月1日から由緒ある『甲賀の神社・仏閣』をパネルと展示物で、また、近江の代表的な製薬会社としてメンタームの『近江兄弟社』をパネルと製品により紹介いたしております。
先ずは、甲賀市甲賀町油日にある『油日神社』の紹介です。油日岳(標高694m)を神体山とする油日神社は、陽成天皇の時代(877)に従5位下の神階を授けた古社で「甲賀の総社」として祀られてきました。静寂な佇まいの中に本殿、拝殿、楼門が見事に調和して国指定重要文化財となっております。
祭禮として油日まつりは毎年5月1日が春の例大祭です。また、5年に一度は氏子関係にて上野頭(うえのどう)のみによって「奴振り」(県の無形民俗文化財に選択)が行われ、郷土色豊かな長持ち奴の歌のしらべ、毛槍奴等の優雅な踊り姿など、往時の盛大さが偲ばれます(次回は平成28年5月1日です)又このまつりには列結野お旅所にて蚊帳を張る珍しい蚊帳まつりがあり、信者がその中に入って神酒み鏡餅をいただき厄除けの恵を受けます。この蚊帳まつりは厄除けの信仰のみでなく、蚊帳が古代繊維の代表であることから繊維業者の信仰もあついそうです。
次に紹介いたしますのは、甲賀市甲賀町鳥居野にある『大鳥神社』です。陽成天皇の元慶6年(882)平安初期に伊賀国より大原中に勧請され、当時は大原山河合寺と称され祭礼は坂本の日吉神社に準じていたそうですが、大原祇園は神輿渡御に用いる千枚張に記されているとおり1415年に始まったとされております。
また、織豊時代に入って牛頭大明神河合社牛頭天王といわれ現在でも氏子の方々から「てんのうさん」とも呼ばれ親しまれています。
後陽成天皇文禄4年(1595)の時、当社の花奪神事に豊臣秀吉よりお墨付きをいただいたと伝えられております。
元禄2年(1689)第五代将軍綱吉の生母桂昌院より永世山年貢五石八斗を当社の修繕料として寄付されたそうです。
明治元年の令達により旧大原荘の大の字と鳥居野の鳥の字を合わせて「大鳥神社」と改称されました。
また、境内に架かる石造太鼓橋は1744年の架設で石工は京都の杉本文右衛門の作だそうです。
大正5年4月に本殿を残し拝殿の一部と楼門、回廊、神楽殿、社務所、河合寺等を焼失し、大正9年に氏子総意の力によって復興しました。そして現在では文化財保護法により国の登録原簿に、拝殿を始め7棟の建物が有形文化財として登録されました。
毎年大原祇園まつりは、宵宮(7月23日)と本祭(7月24日)が行われ、宵宮には氏子の各地区から灯籠を頭にのせて宮入りをし「インヨーソーライ」の掛け声で灯籠をぶつけ合い、その後クライマックスの火取り式を行うという祠形灯籠踊・火取神事があります。
本祭には、氏子の各地区から花鉾を先頭に花傘につけた造花を(真花)や酒樽等を奉納し神前に進み宵宮と同様「インヨーソーライ」と歌い踊る。
花傘につけた造花(真花)を参拝者が奪い合う。そして氏子総代が楼門より撒いた粽(ちまき)を参拝者に授与し、その中にあたり籤(くじ)があれば酒樽を戴くことができるという花奪神事・粽神事があります。
次回は櫟野寺(らくやじ)と阿弥陀寺と近江兄弟社を紹介いたします。お楽しみにネ。